借地権の落とし穴土地登記簿の乙区を見ても分からない

借地権は、土地の借主にとって強力な権利ですが、土地の貸主にとっては望ましいものでは無いことがあります。土地所有者は、借地権がついた土地を購入しても、自由に利用することができません。貸主が一方的に土地を返還するように求めることはできないので、貸主は、土地が自分のもとに戻ってくるのを、半世紀以上待ち続けることになる場合もあります。

土地を購入する際には、借地権の有無は、しっかり確認する必要があります。


借地権とは

借地借家法における借地権とは、建物所有を目的とする地上権又は賃借権のことを言います。地上権とは、工作物又は竹木を所有するため、他人の土地を使用する権利のことです(民法265条)。賃借権とは、賃借人が賃貸人に賃料を支払い、ある物を使用することを請求できる権利のことです(民法601条)。

つまり、借地権とは、他人の土地を借りて建物を建てる権利のことです。あくまで建物所有目的で他人の土地を利用することなので、例えば駐車場として利用する目的で土地を借りる権利は、借地借家法の借地権ではありません。

借地権は、単なる地上権や土地の賃借権よりも、借主が手厚く保護されるようになっています。例えば、存続期間は原則30年以上でなければなりません。30年後に借主から更新を求められた際には、貸主は正当な理由がなければこれを拒絶することができません。

そして、最初の更新の際の存続期間は、20年以上でなければならず、それ以降の更新の際の存続期間は10年以上でなければなりません。土地所有者にとっては、一度借地権が発生すると、いつまでも自由に利用することができなくなるという不利益があります。

また、借地権の存続期間が満了して契約を更新しないときは、借地権者は、借地権設定者(土地の所有者)に対して、建物を時価で買い取るように請求することができます。借地権付きの土地を買ってしまうと、思いがけない不自由と不利益を被るかもしれません。

借地権は不動産登記簿の乙区に登記されることがある

地上権や土地の賃借権は登記することができます。不動産登記簿は、不動産の物理的現況を公示する「表題部」と、権利について公示する「権利部」から成ります。表題部には、法務局が土地に付けた番号「地番」、宅地・田・山林などの土地の用途を表す「地目」、土地の面積を表す「地積」などが記載されています。

権利部は、「甲区」と「乙区」に分かれており、「甲区」には所有権に関する事項が記載されます。権利部の甲区を見れば、誰が登記上の所有者であるかが分かります。そして、権利部の「乙区」には、所有権以外の権利が記載されています。

抵当権や根抵当権などの担保権、地上権や土地の賃借権などの所有権以外の権利は、この「乙区」に登記されることになります。土地登記簿を確認することにより、借地権の存在を確認できる場合があります。借地権たる地上権設定登記がされている場合は、土地登記簿の乙区に地上権の欄が設けられており、その目的が「建物所有」と記載されていますので、これを見れば借地権が発生していることが分ります。

賃借権の場合も、同様に、目的が建物所有である場合は、その旨が登記事項となります。従って、土地登記簿の乙区に賃借権の欄が設けられている場合で、建物所有を目的とする旨が記載されているかを確認すれば、借地権がついた土地かどうかを確認できます。

土地の賃借権は登記されていないことが多い

地上権者が、地上権を第三者に対抗するためには登記が必要です。地上権という物権の効力として、地上権者は、所有権者に対して登記することを請求する権利を持っています。従って、借地権が地上権の場合は、しっかり登記がなされているのが一般的です。

一方、土地の賃借権の場合は、少々事情が異なります。土地の賃借権も、地上権と同様に、第三者に対抗するためには、登記が必要になるのが民法の原則です。しかし、土地の賃借権は、物権ではなく債権なので、賃借人は、賃貸人に対して、法律上当然に登記することを請求できるわけではありません。

当事者同士が、契約で賃借権の登記する旨の特約をしていない限り、賃借人は、賃貸人に登記をするように請求することができません。賃貸人側は、賃借権の登記をすることを望まない場合があるため、土地の賃借権は登記されていないことが多々あります。

土地登記簿を見ても分からない借地権がある

注意しなければならないのは、借地権は必ず土地登記簿に記載されているとは限らないことです。民法の原則では、登記されていない賃借権は、第三者に対抗できません。もし、土地の所有者が変わり、新しい所有者が賃借権の存在を否定した場合、借主は土地の賃借権の存在を主張できなくなり、土地を引き渡さねばらなくなります。

それでは借主に不都合なので、借地借家法は、この民法の原則を修正しています。借地借家法10条は、借地権の場合は、土地の登記簿に地上権や土地賃借権の登記がされていなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる、と規定しました。

もし土地の所有者が変わり、新しい所有者が土地の賃借権の存在を否定した場合、土地に登記が無くても、土地の上に自分名義の建物が建ててありさえすれば、賃借人は「借地権があるから退去の必要はありません」と言えるわけです。

建物を登記することには、土地所有者の協力は必要ありません。建物を建てた所有者が、単独で所有権保存登記を申請することができます。そして、土地の賃借権の場合は、自分で建物の所有権保存登記さえしておけば、土地の賃借権を、新たな所有者や、後順位の担保権者に対抗できるというわけです。

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土地を購入する際には借地権に気をつけよう

投資目的で土地を購入する場合、現地を確認せずに、登記簿などの資料だけで買ってしまうことがあり得ます。しかし、借地権がついている場合は、その土地は、所有者が自由に利用することができません。転売するにせよ、担保価値を利用するにせよ、借地権がついているため思いどおりに行かず、思わぬ損失を受けるかもしれません。

土地を購入する際、土地を担保に取る際には、その土地に借地権が設定されていないかを、十分に確認する必要があります。上述したとおり、借地権がついているかどうかは、土地の登記簿だけを見てもわかりません。土地の上に、建物の登記が存在しないことを確認する必要があります。

土地を購入する際は、現地を実際に確認したうえで、法務局で土地上に登記された建物がないかをしっかり確認してから、購入することが大切です。